精油は植物から抽出される揮発性の油であり、昔から利用されてきました。植物によって精油が多く含まれる部位が異なるため、適切な抽出方法が求められます。今回は、植物から精油を抽出する方法について、その特徴も含めてお伝えしたいと思います。
水蒸気蒸留法
最も一般的な抽出方法で、多くの精油はこの方法で採取されています。比較的安価にでき、多くの植物で使われますが、水と熱に晒されるためデリケートな精油は壊れるリスクがあります。
少量でよければ、理科の実験程度の大きさの装置でも十分精油を採取できます。そのため、マニアックな方の中には自宅に水蒸気蒸留器を置いて、色々な植物で精油が採取できるか試しているそうです。
容器の下部に残った水には水溶性の芳香成分や微量の精油成分が含まれ、芳香蒸留水(フローラルウォーター)として利用されます。自分で化粧水を作るときに重宝しますよ。
圧搾法
主にレモンやオレンジなどの柑橘系の精油を採取する際に用いられる方法です。柑橘類は主に果皮に精油が含まれており、他のハーブなどと比べて精油が蓄えられている袋(油胞)が大きいため、圧搾するだけで精油を採取することができます。(水蒸気蒸留法で採取された柑橘類の精油も存在します。)
熱を加えずに精油を採取できるため、自然のままの香りを楽しめます。但し、搾りかすなどの不純物が混入しやすく、精油が酸化しやすい欠点があります。そのため、通常精油の使用期限は開封後1年が目途と言われていますが、圧搾法で採取された精油に関しては、開封後半年を目途にするとよいとされています。
よく精油のことをエッセンシャルオイルとも呼びますが、細かく言うと「エッセンシャルオイル」は植物などを蒸留して採取したもののことを指すため、圧搾法で採取したものは「エッセンス」と呼ぶのが正しいそうです。
溶剤抽出法
熱や圧力などで成分が壊れやすい、デリケートな精油の抽出に用いられます。前述した水蒸気蒸留法では熱で損なわれる成分があるのに対し、こちらの方法ではそれらの成分も抽出できるため、より鮮やかで美しい香りになると言われています。
精油中に溶剤が微量に残る可能性があるため、肌に塗布するのは避けたほうが良いという意見もあります。
溶剤抽出法で得た精油は、他の方法で製造したものと区別するため「アブソリュート(Abs.)」と名付けられます。ローズ精油の場合、水蒸気蒸留法で得たものを「ローズ・オットー」と呼び、溶剤抽出法で得たものを「ローズ・アブソリュート」と呼びます。
また、コンクリートから分離したワックスのほうにも芳香成分が含まれており、「フローラルワックス」と呼ばれ、化粧品などの原材料として使用されています。
油脂吸着法
油脂が香りを吸着する性質を利用した方法です。前述の溶剤抽出法が一般的になる前に、ジャスミンやチュベローズなどの繊細な花の香りを抽出するために用いられていました。
非常に手間と時間がかかるため、現在商用で行われることはほとんどありません。
超臨界抽出法
1970年代に開発された新しい技術です。超臨界抽出法を用いると、水蒸気蒸留では分子が大きすぎて取り出すことのできない成分も抽出することができ、自然に近い状態の精油を得ることができます。
熱を加えることなく、溶剤が残存することもない安全な方法ですが、機器が高価で大がかりなため普及は進んでいません。
精油以外では食品や野菜の残存農薬の分析に使用されたり、コーヒーからカフェインを除去してデカフェを製造するのに利用されています。
精油の抽出方法は植物の種類や精油の特性に応じて選ばれます。最適な抽出方法を選ぶことで、香りや品質を最大限に引き出すことができます。一般的に販売されている精油には抽出方法が記載されていることが多いので、購入時に確認してみると良いでしょう。